水道水を飲む人



朝の給湯室の顔なじみに挨拶をして一日が始まった。
おはようございますと挨拶を交わすだけの関係だけど。

どこの部署かも知らないが、
今日もコーヒーを入れていた。

僕は水筒に水道水を注ぐ。

その人のことは「毎朝コーヒーを入れてる人」と認識しているが、
その人も僕のことを「水道水を飲む人」と認識してるんだろうかと水筒を洗いながら思う。
水道水を飲むことに少し恥ずかしさがあるというか。


昨日の誤送信の件、じつはめっちゃ落ち込んじゃったと上司にボソッと話したら
大丈夫、大丈夫と励ましてくれた。

一日中気にかけてくれて、
おかげですっかり元気になった。
上司も大変だな。

ぼくなんか後輩に冷たいタイプなので
そんなことぐらいで落ち込んでんの・・・? (笑) と言ってるだろうな。

あーこんな自分が嫌になる!変わりてえと思った。


昼休憩。相変わらずトイレの個室にこもって豆乳を飲んで時間をつぶす。

手すりが付いている個室に入れた。

トイレの個室は特等室、一等室、二等室と自分の中でランク付けしていて、
手すり付き個室を特等室と呼んでいる。
一等室、二等室は少し狭い。

特等室は手すりに寄っかかりながら携帯をいじったり本が読める。

今日は背骨がSの字になるのを感じながら最悪な姿勢で本を読んだ。


本を読みながらふと「人に優しくしたいし助け合える人間になりたい」と思った。

手すり付きトイレを一時間も占領してるくせに薄っぺらいことを考えて恥ずかしくなっちゃうが、
その一瞬は本当に変わりたいと思った。


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